オーストラリアにもプロ野球はあるよ

オーストラリア生活

日本で人気なスポーツといえば「野球」を思い浮かべる人も多いはずだ。日本では国民的スポーツの一つとして確固たる地位を築いているが、オーストラリアでは事情がまったく違う。現地で圧倒的な人気を誇るのはクリケットやラグビー、オージールールフットボールなどで、野球を日常的に話題にする人はかなり少数派だ。

とはいえ、オーストラリアに野球文化が存在しないわけではない。実は国内にはプロリーグもあり、歴史もそれなりに長い。そして過去には、このリーグを経由してMLBで活躍した選手もいる。知名度こそ高くないが、野球好きにとってはかなり面白い環境が整っている。

今回は、ワーホリや学生ビザでオーストラリアに滞在している人向けに、現地のプロ野球事情について深掘りしていく。

 


 

 

オーストラリア野球の歴史

 

オーストラリアに野球が伝わったのは19世紀後半とされている。最初に広まったきっかけは、アメリカからの訪問チームや船員たちによるデモンストレーション試合だったと言われている。当時のオーストラリアはイギリス文化の影響が非常に強く、スポーツといえばクリケットが絶対的な存在だったため、野球が主流になることはなかった。

それでも野球は各都市で徐々に根付き、特にメルボルンやシドニーといった大都市圏を中心にクラブチームが誕生していった。20世紀初頭には州リーグが形成され、学校スポーツとしても一定の普及を見せる。ただし、競技人口は常に限られており、メジャースポーツの座を脅かすまでには至らなかった。

転機の一つとなったのは1989年に始まった旧オーストラリアン・ベースボールリーグ(旧ABL)だ。このリーグはプロリーグとしてスタートし、MLBとの関係も比較的深く、アメリカのマイナー選手なども参加していた。しかし、観客動員や資金面の課題が大きく、1999年にリーグは一度消滅してしまう。

その後しばらくは国内リーグの空白期間が続いたが、2010年に現在のABL(Australian Baseball League)が再編成される形で復活した。この新ABLは、MLBの支援を受けながら運営される点が特徴で、ウィンターリーグとしての位置付けが強い。つまり、北半球がオフシーズンの間に若手選手が実戦経験を積む場として機能している。

この仕組みにより、日本のNPB、韓国のKBO、さらにはMLB傘下の若手選手がオーストラリアに集まるようになった。特に日本人選手にとっては、実戦機会の確保や海外経験を積む場として重宝されている。実際、後にMLBで活躍する選手がABLを経由するケースもあり、スカウトの目に留まる舞台としての価値も一定程度ある。

また、国際大会での実績も徐々に積み上げている。2013年にはキャンベラのチームがアジアシリーズを制し、オーストラリア野球のレベル向上を印象付けた。代表レベルでも、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)への出場を重ねるなど、競技力は着実に上がってきている。

とはいえ、国内での人気は依然として限定的だ。スタジアム規模、スポンサー資金、メディア露出のいずれも日本やアメリカとは大きな差がある。ただ、近年はMLBの海外戦開催や国際大会の影響もあり、野球への関心はゆるやかに高まりつつある。

つまりオーストラリア野球は、「長い歴史はあるが爆発的には普及していない」「しかし近年は着実に底上げしている」という、いわば発展途上のフェーズにあると言える。

 

 


 

 

オーストラリアのプロ野球チーム

 

ここからは2026年現在、オーストラリアにあるプロ野球チームについて紹介していく。

 

■アデレード ジャイアンツ (Adelaide, SAU)

南オーストラリア州アデレードのチーム。過去に1度優勝経験がある。2015年にはヤクルト所属だったデニングがプレーしていた。2025-2026年シーズンには読売ジャイアンツから石塚選手ら4名がウィンターリーグとして参加。これまでNPB選手の受け入れはそこまで多い印象はないが、「ジャイアンツ」つながりの影響も感じる。

 

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■ブリスベン バンディッツ (Brisbane, QLD)

クイーンズランド州ブリスベンのチーム。シリーズ優勝3回、リーグ優勝2回と実績は十分。過去には元日本ハムの杉谷拳士氏がプレーしていた。2025-2026年には横浜DeNAの中川颯選手、益子京右選手が参加。NPB所属選手だけでなく、トライアウト経由の日本人選手が出場することもある。

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■パース ヒート (Perth, WAU)

西オーストラリア州パースのチーム。リーグ優勝2回、シリーズ優勝4回はABL最多。旧ABL時代から存在する唯一のチームでもある。地理的に東海岸から遠く、日本人選手の参加も少なめなため、日本人には最も馴染みが薄いかもしれないが、ローカル色が強く“オーストラリアらしさ”を感じる球団。

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■シドニー ブルーソックス (Sydney, NSW)

NSW州シドニーのチーム。リーグ優勝2回、シリーズ優勝はまだなし。2024-2025年には千葉ロッテの山本大斗、寺地隆成が参加。過去には阪神の新人王・上園啓史も在籍していた。シドニー在住経験がある身としては、個人的に最も思い入れのあるチーム。

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↑シドニー の球場

 

2024-2025年シーズンまではキャンベラ・キャバリーとメルボルン・エイシズというチームもあったが。2025-2026年シーズンはリーグを離脱している。ジーロング・コリアとオークランド・トゥアタも2022年を最後にリーグから離脱している。

 

↑2024-2025シーズン限りでリーグを離脱したメルボルン・エイシズの球場

 

 


 

実際に試合を見た感想

 

自分はシドニーで3回、メルボルンで1回、ABLの試合を観戦した経験がある。

正直なところ、日本のプロ野球ほどの熱狂はない。ただ、試合によってはそれなりに観客が入っており、年々少しずつ増えている印象はある。2015年に初めて観に行った時はかなり空席が目立っていたが、最近は明らかに人が増えている。

当初は日本人観客はほぼ自分一人だったが、今ではNPBのユニフォームを着た日本人らしき観客も見かけるようになった。2024年に観戦した際に驚いたのは、中国人の観客がいたこと。しかもABL目当てではなく、ウィンターリーグ参加中の日本人選手を見るために来ていたという。野球がメジャーでない国のファンが来るのは少し意外だった。

自分はDeNAファンだが、日本一直後に観戦した際、現地の人から「優勝おめでとう」と声をかけられたのは素直に嬉しかった。

リーグのレベル感としては、日本の独立リーグと同程度と考えるとイメージしやすい。資金面は潤沢ではなく、審判が3人制の試合も普通にある。スタンドもコンパクトで、基本はバックネット裏とベンチ上周辺が座席、その他は立ち見というケースが多い。

ただし、ファンと選手の距離は異常に近い。試合前にトイレで横浜DeNAの勝又選手に遭遇したこともあるし、試合後にグッズ売り場で普通に選手が買い物している場面にも出くわした。これはNPBではなかなか味わえない体験だ。

チケット価格も非常に安い。2026年時点で高くても30ドル以下、安い席なら12ドル程度。しかも座席は余裕があるため、安いチケットでも見やすい位置で観戦できることが多い。メルボルンでは試合後にグラウンド開放イベントがあり、野球未経験者にはかなり貴重な体験になる。

フードはピザ、バーガー、ホットドッグなど典型的な球場メニュー。アルコールも普通に販売されている。

一点注意点として、球場の立地はかなり郊外寄りだ。シドニーもメルボルンも、シティから電車+バスで1時間以上かかった。車を持っているなら、車移動が圧倒的に楽。

 

↑メルボルンの球場にいた広島時代の前田健太投手のユニフォームを着てる人

 

 


 

まとめ

 

今回はオーストラリアのプロ野球事情についてお伝えした。
まとめると、

・オーストラリアにもプロ野球リーグ(ABL)は存在する

・レベルは独立リーグ級だが、選手との距離が非常に近い

・チケットが安く、留学生でも気軽に観戦できる

オーストラリアでは野球はまだまだマイナースポーツだが、MLBの海外試合やWBC予選ではしっかり観客が入っている。2017年頃はバーで野球中継を見るのは難しかったが、現在はMLBを流す店も増えてきた。

今後人気が伸びる余地は十分ある。野球好きなら、オーストラリア滞在中に一度は現地のプロ野球を観に行ってみる価値はある。

 

↑2016年のWBC予選時のボール。たまたま手に入った

 

 


 

地球の歩き方 シドニー&メルボルン 2025~2026

 

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